wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

詫摩佳代『人類と病』

本日はルーティン姫路、高校生の時差登校のせいか以前よりも乗客が多く、明石まで座ることができずいつもより疲れる一日となった。週の前半に採点と並行して4本の講義収録をするはめになったのも響いている。そんななかで電車読書の備忘は「予言の書」になったと話題の表題書。著者は1981年生まれの北岡伸一門下で(購入する前に知っていればスルーするところだった・・・)、2014年に旧姓で国際連盟以来の保険機関に関する専門書があるらしい。そんなわけで感染症に対して国際機関と諸国がどのような対策をおこない、また政治的なせめぎ合いがあったのかが論じられている点が興味深く、天然痘根絶が米ソが途上国の支持を得るために積極的に資金を提供したことが要因というのも初めて知った事実。それが新型コロナウイルスが発覚した本年2月ぐらいまで論じられ、残り三分の一が生活習慣病対策(おもにタバコ規制)と医薬品開発とアクセスをめぐる動向についての紹介。ただし後者については先進国・途上国という分け方が、健康保険制度の相違を無視した雑なもので、日本についても近年の医療費抑制政策などなかったような書き方で違和感。伊勢志摩サミットにも関与されているようで、そのあたりはやはり北岡門下というところか。ただ最後にWHOへの一方的な批判が誤りであり、それが国際的な対立に巻き込まれながら果たした役割について、振り返ることを呼びかけており、いろいろ勉強させてもらった。

人類と病|新書|中央公論新社