wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

小田内隆『異端者たちの中世ヨーロッパ』

積ん読のあまりなかった9月に購入したものの、別の本を優先させたためようやく読了。途中までは個別論文を読んでいるようで、電車読書にはけっこうきついものがあった。カタリ派・ワドル派など異端の実態を少ない史料から追求する困難はわかるが、もう少しわかりやすく書けないものか。一方で5章「キリストのための戦い」における異端審問の実態分析と、1230年代までに西欧キリスト教世界で「キリストのためのたたかい」と「悪魔の陰謀」という二項対立図式が成立することを明らかにし、終章「権力の歴史へ」でフーコーに依拠しながらこれが民衆の内面にまで踏み込む近代権力の誕生につながるという点は興味深かった。かつて池上俊一動物裁判』を読んだときにも思ったが、経済的に先進的とはいえないキリスト教世界のみが、何故にこのような特異な次元から近代的なシステムを生み出すことができたのだろうか。かつて網野善彦阿部謹也の議論も援用しながら、14世紀を民俗史的転換と位置づけたが、差別の深化いうような共通点は見いだせても、世俗化とキリスト教の深化というやはり根源的な違いがあるような気がする。本書でも転換は鮮やかに説明されているが、やはりその本質的な理由までには到達していないようだhttps://www.nhk-book.co.jp/shop/main.jsp?trxID=C5010101&webCode=00911652010。先週から急にコンピューターがフリーズするようになり、本ブログも一度飛んでしまって書き直している。どうもモニターとの関係のようだが、購入してから2ヶ月は何ともなかったのに困ったことだ。やはり出張修理ありにしておくべきだったと後悔される。