wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

原武史『団地の空間政治学』

月曜夜の通史は今年でおしまい。本日は幕末・維新の外交史だったのだが、時間配分を間違え、維新政府の膨張政策が中途半端になってしまった。来週以降で取り返さなければならないのだが、その後もぎっしり詰まっており何とか段取りを考えなければならない。電車読書のほうもこの講義以外では利用できないのだが、何となく書店で見かけて購入してみたものhttps://www.nhk-book.co.jp/shop/main.jsp?trxID=C5010101&webCode=00911952012。1960年代の大阪・多摩・千葉に建設された団地における政治文化と自治会活動について、鉄道マニアの著者らしく沿線の状況をあわせて論じられている。各団地で結成された自治会における市民文化と共産党系の微妙な関係が上田耕一郎不破哲三などのエピソードとともに具体的に論じられており(戸坂潤の愛人が活動家にいたというのも初めて知った)、高度成長によって都市近郊にインフラ整備なく急速に広がった団地の矛盾とそこでうまれた政治文化の状況がよくわかる。また団地建築はアメリカには存在せず、むしろソ連をモデルとしたものというのも興味深い事実。一方それが70年代以降にニュー・タウンと車社会によって私化される状況と創価学会の進出によって変化するという点は紙数が短すぎやや具体像に欠けるところ。なお基本史料として自治会文書を用いているのは重要で、近年の建て替えなどでかなり散逸しているはずで史料保全が急務となっている。