wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

盛本昌広『戦国合戦の舞台裏』

ODつながりということもあって(お会いしたのはもう15年以上前のことになるが)、著者の一般書はすべて購入しておりこれが最新のものになる。上杉氏と北条氏の苅田・苅麦合戦など興味深い事例も紹介されているのだが、ともすれば叙述が脱線しがちなところが気になる。はじめにで選挙と合戦をアナロジーで捉えるのはまだわかるが、スポーツが勝ち負けを競うという合戦の形式を踏襲しているというのは余りにも無茶で、ゲームと実際の合戦を誤解させることになる。これは「はじめに」だが、本文でも多様な鐘の事例が並べられていたり、いきなり近世の本陣の話になったりして大変読みにくい。合戦それぞれの場面について事例を紹介するというスタイルなので仕方ない部分もあるが、もう少し整理する必要があったのではないか。また戦国合戦といいながら豊臣期の事例が結構取り上げられており、全く意識されていないわけではないが合戦のそのものの変化が光景に退いている点も疑問がある。千人単位と・万人単位・一〇万人単位では性格は全く異なり、食糧供給体制もそれによって大きく変化しているのではないか。なお「おわりに」で「こうした音や本書で少し扱った時間など感覚的なテーマはかつては社会史と呼ばれ、注目を集めた時期があったが、社会史に対する強烈な拒絶反応や批判も相まって、近年は社会史を忌避するのが一般的な動向である」とする認識には、到底従えないところである。まあそれはともあれ、著者の執筆意欲には感心させられるところhttp://www.yosensha.co.jp/book/b69967.html。明日から三連休になる。校正を終わらせて少しは自分の勉強もしたいところだが・・・。