wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

『大和川付替えと流域環境の変遷』

2004年が大和川付替え300周年だったということもあって、博物館特別展示・関係書籍の出版が相次いだ。2008年10月刊行の同書もその一環といえるものだが、監修者西田一彦氏および編者のうち北川央氏以外の2氏がいずれも工学部出身で、土木史としての側面を重視したのが特徴といえるhttp://www.kokon.co.jp/h8502.htm。河内湾から付替えまでの流露変遷が、考古学から明らかにされるとともに、付替え技術について専門的な見地から評価されている。そうした全体の構成の中でやはり興味が引かれるのが、13世紀と17世紀に見られる洪水の多発と天井川化の進行という事態である。後者は大坂城建設に伴う生駒山系からの石材搬出とその後の大規模な都市建設など具体的に詰められそうな気もするが、問題は前者である。そもそも考古学でいうところの13世紀の意味を詰める必要はあるのだが、それを信じるとしても(いちおう瓦器碗による編年がしっかりしている時期)背景をどう想定するかは文献史の課題となる。大阪南部はいろいろと興味深い事例は多いのだが、全体にどう筋道をつけるかがなかなか見通しがつかない。著書にまとめるためには一本は書いておきたいところ。とりあえず自己逃避シリーズ4冊は読了したが(残り2冊の紹介は略)、気温はますます暑くなるばかりで、体調もすっきりいかず仕事に取りかかれない。来週からは旅行三連チャンで、それが終わるとすぐに授業も始まってしまう。旧稿の論文化を進めるべきだったかもしれないが、それも微妙になってしまった。せめて史料翻刻だけでもしておくべきか。