wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

ジョセフ・ギース/フランシス・ギース『大聖堂・製鉄・水車』

本日は京都で試験ということで、最後の図書館利用。たまたま見かけた科研報告書(刊行は2001年)に「豊嶋蔵人」の文書が翻刻されており、あわててコピーする。仏教関係を中心に多数の蔵書を有し、新刊が並ぶのも早く今年度で使えなくなるのはやはり痛い。電車読書のほうは、昨年書店で見かけて、解説の著者は親しみやすい歴史読み物の作家と言うことで少し迷ったものの購入したもので、副題は中世ヨーロッパのテクノロジーhttp://www.bookclub.kodansha.co.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2921464。西暦500年には「アジアの貧しい親類」だったヨーロッパが、中国文明の諸発明をイスラムとの交流によって受け入れ改良したことで、1500年にはそれらを追い越して最先端になったと主張するもの。ややヨーロッパ中心史観のきらいはあるが、個々の技術の展開については興味深いもの。タイトルにある大聖堂のための石造建築・高炉による製鉄・水車の多様な利用・時計に代表される歯車の発達など、その過程が詳しく説明されている。翻って日本中世で技術史がどれだけ書けるかというと心許ない限り。そもそも技術書の成立自体が早くても16世紀で、それ以前にはほとんど思い当たらず、中世の水車と言っても当方だけかもしれないが全くイメージが湧かない。海域史は今も盛んだが、中国からどれだけの技術移転があったのかもはっきりせず考古学に頼るしかないというのが現状。建築技術史では15世紀の画期性が評価されており、何とか文献から迫る方法も模索する必要がある。なお著者は研究者ではないようで、その立場もどうも日本ではよくわからない存在。