wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

八重樫忠郎・高橋一樹編『中世武士と土器』

本日は講義3コマ。終わるとぐったりなるが何とか終える、評判が悪く受講人数が少ないため少しは負担は軽いのだが…。そんなこんなで電車読書の備忘http://www.koshi-s.jp/shinkan/1610_1-shinkan.htm。全241頁のうち、最初から104頁までが編者二人と斎木秀雄氏の三人による対談。奥州藤原氏の平泉・12世紀半ばの河越館・12世紀後半の初期鎌倉幕府大倉御所で出土した土器(かわらけ)について、一国レベルを超えた地域の諸勢力が集まった儀礼(宴会)を秩序立てるものとして用いられたと評価し、京都の影響力は初発となったモノだけで、武家が独自に発展させていった過程として歴史像が描かれる。考古学者による出土事例のわかりやすい説明と、高橋氏によるさまざまな史料と的確な研究史理解から紡ぎ出される事例が、次第に歴史像へと昇華していく様相は大変面白く、考古学者と文献史学者の対談としても出色のもの。当方はもともと平泉幕府については懐疑的だったが、武家権力の展開過程として充分に説得的なものとなり得ているようだ。なお後半は各地の出土事例の紹介で多数の図面が掲載されている。ただ残念ながら当方にはロクロ成形と手ぐすねすら充分に見分けられない為躰。考古学者からいろいろお話を伺っているほうだと思うのだが、とことんセンスがなく情けない限り。