wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

木簡学会編『木簡から古代がみえる』

火水で読了。木簡学会編ということもあり、普通なら集まらないだろう豪華執筆陣が、それぞれのテーマについて平易に叙述している。家の門前に木製のフーフダを取り付ける習慣が「明治初年まで遡る可能性がある」という沖縄史にとって意味のない区分や(政治的画期は「もう一つのペリー来航」か「琉球処分」だろう)、寺社制度の説明がないため理解不可能な、沖縄における呪符木簡を取り上げた章を除けば、それぞれ興味深く読むことができた。木簡については講義でも取り上げておりそこそこ勉強してきたつもりだったのだが、奈良県香芝市下田東遺跡の年魚(鮎)売買を示したものなど、全く知らなかった事例も少なくない。研究の進展が実感されるとともに、学会などで各時代の研究動向を整理する必要性も感じられる。時代を超えた問題関心の共有と討論の欠落こそが、この間の日本史学会にとってもっとも問題な部分であり、しょうもないことを言って振り回すよりは喫緊な課題だろう。それはさておき、本書でもう一つ興味深いのが、中国・朝鮮での発掘事例に関する紹介で、用語・形状などいかに大きな影響を受けてきたかが理解され、東アジアレベルで文字文化を考えることができる状況になっていることが実感されるhttp://www.iwanami.co.jp/cgi-bin/isearch?isbn=ISBN4-00-431256-6。今日は家でゆっくり過ごすことができ、中世都市研究会の前日に多賀城・松島ツアーを計画する。