wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

岩波書店辞典編集部編『世界の名前』

だいぶ暑くなってきて、汗かきで空調に弱い当方にはつらい季節を迎えることになった。月曜日の非常勤先は教室で設定でき大教室はちょうどよいぐらいだったが、受講者カードには暑いという不満が多数寄せられていた。本日は集中管理の空調はまだ始まっておらず、窓全開で心地よい風が入っていたが、途中から鼻がムズムズに。花粉症がようやく落ち着いたと思っていたのだが、黄砂なのだろうか…。結局は一年中、なにか抱えてしまっている。電車読書のほうは、秋の講義の豆知識ということで衝動買いしたもので、世界100の地域の言語による名前が取り上げられているhttps://www.iwanami.co.jp/cgi-bin/isearch?isbn=ISBN978-4-00-431598-8。ただそのため一つが見開き2頁ほどのエッセイで、歴史・文学・文化人類学などをバックボーンとする書き手のセンスによってかなり質が異なっている。その言語について基本的情報が全く説明されないまま、個別の事例の紹介がされていて理解しがたいものもいくつかあったし、ある種の抑圧的機能を果たしていた(いる)アフリカーンス語についての一文には、その説明が全くなかった。その一方で世界の先住民のさまざまな命名法、父系制原理に貫かれているものとそうでないもの、苗字が必須になった時期に一般化した~の息子(ソン・セン・ノフ・マク)などといった接頭or接尾語、19世紀ギリシアナショナリズムが生んだ古代ギリシア語名、本名をなのる地域とニックネームが一般的な地域、容易に名前の変更が可能な社会、キリスト教風の名前の受容のされ方など、それぞれの地域の歴史的・文化的習慣が反映しており、興味深い。できれば各分量を5倍にして20ぐらいのテーマで論じてもらえれば、より有益だったのだが…。