wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

デニス・フリン『グローバル化と銀』

16世紀の転換の世界史的、または日本史における転換は疑いないところで、それが銀の産出と国際流通にあったことは周知の事実になっている。そうは思ったが、アメリカ人研究者のものということで購入してしまい、山梨に行く途中で読了する。全体は解説と、「グローバル化は1571年に始まった」・「徳川幕府とスペイン・ハプスブルク帝国」・「貨幣と発展なき成長」の3論文からなる。最初のものはそんなものかと思ったが、2本目は参考文献のひどさに唖然とする。いまだに引かれているのは永原慶二とJ・ホール編の『戦国時代』でもはや30年近く前のものになる。結局英訳されているのはそののみで、戦国時代の研究は一新されたはずだが全く伝わっていないのだろう。3本目は中国は貨幣として銀を吸収して産物を輸出しているので、経済発展にはならず資本主義が成立しなかったといいたいようだが、全く意味がわからない。ウォラーステインを批判したいようだが、よっぽどそのほうがダイナミズムがある。そもそも当該期における人口増をどう理解しているのだろうか。資本主義こそ全てで住民生活には無関心なアメリカの研究者の本流というのは、こういうものなのだろう。個別研究のサーベイの不充分さと、結果からしかものが見えないという点で、グローバル・ストーリーの欠陥がよくわかる本だとはいえる。解説には何とも書いていなかったが、訳者たちはどう考えているのかは疑問に思う。http://www.yamakawa.co.jp/product/common/