wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

大黒俊二『声と文字』

大変面白く読んだ。ローマ帝国解体からルネサンスまでの声と文字の関係について、非常によくわかった。カロリング・ルネサンスによるラテン語の揺り戻しと俗語との分離による二重言語体制の諸地域での具体像が示され、漢字と仮名との関係でも示唆的。11世紀における爆発的な文書量の増加は、日本でも13世紀末に相当するとしたら、共通するのは交通の問題か?リテラシーについても「文字を知る人」と「知らぬ人」の間に「知る人のごとき」という概念が加えられることで、より豊かな像が描かれている。特に興味深かったのが商人の変化で、体力勝負の遍歴商人からもの書き商人への移行で、日本中世でも考えてみる必要がある。その他にも多数の事実が紹介されているが、また機会があれば触れてみたい。http://www.iwanami.co.jp/cgi-bin/isearch?isbn=ISBN978-4-00-026328-3