wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

中野晃一『右傾化する日本政治』

月曜三限1回目は仮名簿288名、火曜日2回目は計3コマでプリントが330枚ほどはけた。しかも脅しが聞いたせいかカードがみっちり書かれており、チェックを終えたのは本日午後。諸雑用があったとはいえ、時間をかけすぎてしまった(淡い期待が当方にとって最悪の結果に終わり、来年度期待できる仕事はこれだけなのだが・・・)。いろいろ切羽詰まっているが、とりあえず昨日読了の電車読書の備忘https://www.iwanami.co.jp/cgi-bin/isearch?isbn=ISBN978-4-00-431553-755年体制における自民党政治を開発主義と恩顧主義の旧右派連合と捉えたうえで、その成功の代償としての貿易摩擦財政赤字への対応と、国際的な新自由主義の跋扈という条件を前提として、大平から安倍までの政治史を限定的な揺り戻しを重ねがらの新右派への転換過程として叙述したもの。中曽根による新自由主義改革の開始、竹下旧右派連合の巻き返し、土井社会党の躍進と未完の党改革、小沢一郎の「政治改革」「積極的・能動的平和主義」、限定的揺り戻しとしての自社さ政権と国際協調主義の最後の輝きとなった村山談話、橋本行革と対米追随路線・バッククラッシュ、そこで整えられた「舞台装置」を最大限活用した小泉パフォーマンス政治、新自由主義とセットで登場した復古的国家主義を担った第一次安倍、揺り戻しとしての民主党による「政権交代」とその右派化、野党ととしてさらに右傾化した自民党が消極的支持を集め第2次安倍へ。国際協調主義の勃興に後押しされて始まった「政治の自由化」が「反自由の政治」・復古主義へと転化し、経済的新自由主義が寡頭支配の強化を推進する企業主義ドグマへと劣化した過程が、右傾化と小さな揺り戻し、理念と政局というダイナミズムを持って示されており、後藤田・野中らが政局対応からむしろ新自由主義転換を促進する役割を果たしたことも興味深いところ。著者は現段階をとめどなく右傾化が進行し自由民主主義国家としての体裁を保っていられるのかすら危ぶまれるとし、リベラル勢力が新自由主義ドグマと訣別し、左派勢力が自由化・多様化をいっそうすすめることによってのみ、反転攻勢が成果を挙げることになると展望する。著者は「学者の会」(理念的には間違いではない無責任な批判により崩壊する可能性もあるが)の中心的メンバーとして実践的に活動されており、最後の展望が何とか果たされることを望むばかり。ついでに当方の未来にも光を・・・。