wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

佐藤卓己『流言のメディア史』

昨日から講義は再開しており、本日は枚方3コマ。そういうわけで著者名で衝動買いしてしまっていた表題書を読了https://www.iwanami.co.jp/book/b440444.html。過去に何冊かで勉強させてもらい、本書でも「火星人来襲パニック」が、現実のラジオ放送時に現象(もともと炎上系のドラマで、慣れていた子供はフィクションと理解)というより、その後の報道・研究によってむしろ増幅された物語であったこと、ロンドン海軍軍縮条約に際して米大使が大手新聞を買収して支持記事を書かせたという二流新聞のガセ報道が、裁判で否定されたにも関わらず大衆心理に影響を与え、その後の戦争支持に迎合する報道への道を開いたことなどいろいろ教えられることが多く、先行研究から講義にも使える表を示され充分に有益。その一方で『昭和史(新版)』と工藤美代子著書を「民衆の性善説では一致」と同列扱いする姿勢、2014『朝日新聞』の「吉田清治」証言誤報検証報道という、①もともと朝日のスクープではなく(最初の報道は大阪産経)、②記事としても直近に問題になったわけではなくかなり以前のものを、③なぜこの時期に大々的に発表したのか、④という政治的タイミングについて論じることなく誤報の代表事例として紹介し、⑤秦郁彦の研究に全面的に依拠して断罪する、のを読んで、こういうスタンスの方だったというのをはじめて知り驚き。冷笑系学者ばかりでやはりこの国の未来は暗い…。施設からの度々の連絡で予定は狂いっぱなし、在宅でなくても終末期はやはりしんどい…。