wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師・研究員などとして生活の糧を得ていますが、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

村井章介『古琉球ー海洋アジアの輝ける王国』

本日は公務出張で旧夢前町域の寺院踏査、久しぶりのスマホ万歩計三万歩越えで予想以上に疲れたが大変勉強になった。ただもともと一時間に一本しかないバスが遅延していたことで、かなりの待ち時間が生じ、そのおかげで読みさしの表題書をようやく読了https://www.kadokawa.co.jp/product/321410000188/琉球王国については90年代に刊行された著作をもとに講義でも何度か取り上げていたが、最近の担当科目には組み込むことができず、当方の知識も止まったままになっており、著者の近業も全く目を通していなかった。本書はそうした認識をかなり刷新するもので、中国史書の食人記事をむしろ南方系の習俗として積極的に評価し、琉球社会の海洋アジア的特質として再認識、中継貿易史料として読まれていた『歴代宝案』から、中国系海商による民間交易の実態を明らかにし、交易に従事するとともに、かな文字史料における女性(神女)の重要性を強調し、近世の和様漢文化をヤマト化として捉え直す、島津氏による征服史観を戦国の多元的状況からむしろ16世紀前半を琉球中心の国際秩序と評価し、その観点から初期の世界地図史料を読み直すなど、刺激に満ち満ちたもので、論文集作りに悪戦苦闘する身からするとうらやましい限り。ただ東南アジア交易に関わる部分の叙述が唐突、白黒地図が小さすぎ、小見出しにいきなり著者もしくは先行研究を付すなど、バス待ちの立ち読みでは理解しにくいところがいくつかあったのはご愛敬か…。