wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

『世界』12月号と北星学園大学非常勤講師問題

後半がらみの記事にゆゆしきことが書いてあったのを立ち読みで見つけたため、十数年ぶりに購入しついでに通読してみたもの(自宅には9.11直後刊行のものが転がっている)。オランダにできたというサイバー公益通報システム「パブリークス」のことは初めて知ったが、全体にはネットメディア・Twitterなどでも発信している書き手が、質量とも同じような記事がほとんど。現在の発行部数は不明だが、このスタイルで今後も維持できるかはかなり疑問。さて特集のルポとして北海道新聞記者の長谷川綾氏が「『私たちも北星だ』ー大学の自由をまもろうと立ち上がった市民たち」を執筆し、韓国の従軍慰安婦報道を積極的に紹介した朝日新聞社の元記者が非常勤講師を勤める大学に抗議・脅迫がなされた事件の経緯についてまとめられている。当人は早期退職して神戸松蔭女子学院大学に再就職予定だったのが、週刊文春報道で大学が取り消しにし、札幌勤務時代に兼職していた非常勤講師を継続している、新聞社から退職金をもらっているとはいえ専業非常勤講師らしい。さらに大学内では護憲派やリベラル派も含めて「雇い止めやむなしに」傾いているとのことで、実際にそういう報道も10月末になされた。その理由として挙げられているのが「常勤の教員を追放するなら、大学の自治、学問の自由に関わる。だが非常勤は必要に応じて採用するから、必要性がなくなれば講座もなくなる」「契約更新しないのも大学の自治」「別の大学で教える『学問の自由』はある」(P125)とのこと。現に雇い止め報道がなされた直後には、この問題で多数メディアに登場している中島岳志氏もTwitterで「もし仮に元朝日新聞記者を雇止めするとしても「問題が起きる以前から予定していたこと」や「別のふさわしい講師に決定」などと言明して、脅迫と解雇の因果関係を否定しなければなりません。脅迫が効果的だったと表明することの見識を疑います。@nakajima1975」 https://twitter.com/nakajima1975/status/528915659980144640と発言しており、同趣旨の専任教員らしき人の発言は散見された。すでに立命館大学広島大学では講義内容にまで外部から抗議がされるようになっているが、これも専任教員だから守られたもので非常勤だったら切られていただろう。南京事件に関して受講生からお手紙(脅迫めいた文言はなかったが)をもらった経験を有する身としては、「後ろから撃たれない」ように細心の注意をはらう必要がある。最終決定は12月初めと言うことだが、もし雇い止めする場合は非常勤だからなどという差別的な理由は付けないでほしいもの。なおこの問題に関する経緯は中島氏も呼びかけ人に加わる「負けるな北星の会」http://makerunakai.blogspot.jp/が詳しい。