wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

美川圭『公卿会議』

本日は100分3コマの日、相変わらず終わるとヘロヘロ、しかも明日は姫路で5:30起床。そんな中で簡単に電車読書の備忘http://www.chuko.co.jp/shinsho/2018/10/102510.html。著者は白河院政の成立を位置づけ直した論考を皮切りに「公卿会議」(これは史料用語ではなく、今回の編集者の造語とのこと)から院政の展開を明らかにしてきた研究者で、本書では古代の太政官会議から、摂関家の陣定、院政期の院御所議定・在宅諮問、鎌倉期の評定制というように、14世紀までの貴族社会の意思決定の様相をたどったもの。先行研究をしっかり紹介しながらの丁寧な文章で安心して読める。ただ説明は必要とはいえ、院政期以後は議定の実像よりも政治史叙述が勝っているように思え、全体229頁のうち173~221頁で後鳥羽院政から義満までを説明するのはやはり言葉足らずの印象を受けた。とりわけ終章で鎌倉幕府が成立してから200年もの間、朝廷が合意形成をしながら政治権力として一定の統治能力を維持したことを、高く評価しておりなおさらその感が強い。