wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

佐藤彰一『宣教のヨーロッパ』

本日は関西館で文献調査。論文は印刷所にまわっているが追加史料はまだまだ集まる。採点でこもりきりだったので久しぶりの電車読書の紹介www.chuko.co.jp/shinsho/2018/11/102516.html。明言はしていないが著者が定年後のライフ・ワークのように続けているカトリック史の続編で、宗教改革から世界伝道という16世紀が対象。ただし著者はプロテスタントに対する対抗改革とはとらえず、カトリック改革として評価し、オランダ人の教皇ハドリアヌス六世が急死しなければ別の可能性があったとの説が紹介される。なんと以後はヨハネ・パウロ二世の登場までイタリア人教皇が続いたとのこと。また托鉢修道会の動きをモンゴル帝国時代からの流れに位置づけ、イスラムへの対抗として世界伝道をとらえ、新大陸のキリスト教化を能動性を有したものとして評価。続いてイエズス会を端緒とする日本宣教について論じたのちに、アステカ貴族出身でラテン語によるキリスト教文化を深く身につけた人物を取り上げ、キリスト教による世界化・ラテン語グローバル化として締めくくられる。戦国日本については宣教師側の一方的な見方を叙述しているだけに感じる部分もあったが、イエズス会をはじめとする宣教側の動向の説明は興味深く、コロンブスヴァスコ・ダ・ガマらの十字軍精神については、来年の講義ではより強調すべき点としたい。