wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

矢田俊文『近世の巨大地震』

本日は枚方3コマ。朝は地下鉄のダイヤ改正で、昨年度まで乗っていた電車が最寄り駅始発・新大阪止まりになったため、天王寺駅手前でのわざと遅らせがなくなりいたって快調、一つストレスの種がなくなった。ただし帰りは100分講義になったため、終了が30分遅くなり、その上にバスの接続も悪いため帰宅は50分遅くなった。費用は高くなるが別のルートに変更すべきか。そんななかで電車読書の備忘http://www.yoshikawa-k.co.jp/book/b352281.html。著者はもともと中世史研究者だが、本書は完全に近世の文献史料をもとにした地震に関する著作。ただし文体はいつもの著者独特のもので、禁欲的に史料から導き出される事象を淡々と叙述したもの。そうして史料の取扱が不充分な先行研究を批判するとともに、「皆潰」・「半潰」・「大破」という用語の具体的内容が明確にできていないという研究の現状も率直に示されており、俳諧史料の活用も含めて、文献史学の諸側面が示されており勉強になる。またすでに日本史研究会大会報告で知っていたが、やはり圧巻なのは、越後三条地震に関して新発田藩に提出された記録。被災者家族が地震発生時に何をしていたかが詳細にわかり、10歳前後ぐらいまでの子どもは遊んでいて、それより年長者は労働していたこと、百姓は初冬の稲こなしをしているのに対し、名主のみが書き物をしていたなど、日常が浮かび上がってくる点は大変興味深いところ。ここまでわかるのはさすが近世とやはり感嘆せざるを得ない。