wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師・研究員などとして生活の糧を得ていますが、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

ルシオ・デ・ソウザ、岡美穂子『大航海時代の日本人奴隷』

本日の講義は肖像画。論理的に説明したつもりなのだが、感想を読むと理解しているのは一割以下。当方が勘違いをしないためにやっているとはいえ、情けなくなる惨状…。久しぶりに借り物から戻った電車読書は、秋の講義の関係もあって出る前から気になっており、購入してみた表題書http://www.chuko.co.jp/zenshu/2017/04/004978.html。あとがきによると、ポルトガル語で出版された夫の著書『16・17世紀の日本人奴隷貿易とその拡散』の一部を、吉田尚弘(書誌情報には記されていないが、呼び捨てで、最後に吉田氏に謝辞)が翻訳し、妻が改稿したものということ。アジア・スペイン領中南米・ヨーロッパで徴証が確認できる日本人奴隷(名前はポルトガル語名で、日本名はほぼ不明)の概要を紹介したもので、改めてその広がりには驚かされるとともに、奴隷身分の否定を訴えた裁判を起こしていたことや、傭兵として暴力的な振る舞いが目立つ点も興味深い。さらに岡氏の著書ですでに読んでいたが、もとユダヤ教徒で追求を逃れたポルトガル人が東アジア交易で大きな役割を果たしていることも、イエズス会による日本侵略のような見解が、日本人研究者から出されている現状からみて重要。ただ原書はその三倍の量があるとのことで、日本イエズス会奴隷貿易との関わりや、ポルトガル当局の認識・法令(法的には日本人奴隷は禁止)については省略されている。また中国人・朝鮮人・東南アジア人などの奴隷についても断片的にしか触れられていないため、奴隷貿易全体の構造のなかでの位置づけや、日本からの海外渡航者の中での奴隷の占める位置などが見えにくくなっている点はやや残念。