wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

丸山浩明『アマゾン五〇〇年』

本日は枚方3コマ、帰路のJRに遅れ情報があったが、事なきを得る。京都行きなどもあったため読了した表題書の備忘。主に1542年のスペイン人による「発見」以後の歴史を辿ったもので、フランスの進出・同君連合などを切り抜けたポルトガルの領有、先住民の奴隷化を批判するイエズス会の追放、王室のブラジル移転、開放を迫るアメリカと南北戦争期の黒人奴隷移送論、南軍支持者の逃亡と様々なミックスが進む現地社会への失望、奴隷制廃止とブラジルの「白人」化政策による南欧移民の導入、第一次ゴムブームと国内移民の過酷な労働、ボリビアとの紛争(背後にアメリカ)に対応した鉄道建設が大量の犠牲者を出したあげく完成時にはアジア産ゴムに圧倒され早々に採算割れに、フォードのゴム農場開発と労働者へのピューリタン生活様式の押しつけによる破綻、アメリカ・ブラジルでも排日もアマゾン当局の受け入れがあった日本人移民、鐘紡が主導した南米拓殖株式会社、過酷な環境で定着率は10%、アメリカが後押しした黄禍論、戦争によるアメリカ資本による第二次ゴムブームの悲惨な末路、日本の東南アジア侵略がもたらした胡椒ブームと日本人移民、というようにアマゾンが「人跡未踏の静謐な秘境」ではなく、列強諸国の進出、ブラジル政府の干魃・貧困問題での「安全弁」との位置づけから、内外から多数の移住者による「多国間のグローバルな関係性」におかれたことを示したもの。全く無知な領域でいろいろ勉強になった。著者はもともと筑波の地理学のようで、自然地理的なアマゾン開発(人為的な環境破壊を含む)と日本人移民の著書がある。

アマゾン五〇〇年 - 岩波書店