wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

山本文彦『神聖ローマ帝国』

引き続き電車読書の備忘。秋の講義のため頭の整理のために衝動買いしていたもの。カール大帝カロリング朝から、ナポレオンを保護者として成立したライン連盟の連邦離脱、ハプスブルク家フランツ二世の退位(放棄)宣言までの全史を一書で読めるのは有益で、最後の点なども不勉強で初めて知った。ただし複雑な歴史を説明するために多数の人名が登場し、本日の当方のお座敷がそうだったように、なかなか頭がついていけなかったのも現状。所領の錯綜を簡潔な地図にできないという理由は分かるが、やはり何らかの視覚情報が欲しかったところ。それにしてもヨーロッパ王家の婚姻関係の特異さは何故なのか。王家に相応しい家柄同士・死別以外で離婚できないという事情から、近親婚が多数となり、断絶しては継承戦争という不安定さ。妾腹でもともかく後継者を残すことこそが王の責務というのが他の地域では一般的だと思うのだが、その違いは父母ともに高貴さを求めるゆえなのか、キリスト教の影響なのか。こういう状況なので、19年で16人の子供を産んだマリア・テレジアのような、多産の女性が君主として有能というのもよくわかる。

神聖ローマ帝国 -山本文彦 著|新書|中央公論新社