wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

兵庫県立歴史博物館『北前船』

本日は9:30から姫路で某報告書作成のための委員会。なぜ当方がというテーマなのだが、諸事情から末席を汚しており、史料編の取りまとめという重要な役割を仰せつかることになってしまった。1月締め切りという結構タイトなスケジュール。ともあれ何とか方向性は決まりメンバーで昼食をとり、午後は表題の展覧会を観覧するhttp://www.hyogo-c.ed.jp/~rekihaku-bo/official/exhibition-sp2.html新潟県博と合同で企画されたという近世の企画だが、当方の目から見ても非常に興味深いもの。多数の航路図が並べられており、日本海交通の様相が視覚的にわかり、海から見た港・河口・城・山などのランドマークが描かれているのも興味深い。また播磨坂越浦・但馬諸寄村などの詳細な絵図も見どころの一つ。前者が矢野庄関係史料に見られることは記すまでもないが、後者は得宗被官安東氏の所領の一つである但馬二方庄の港湾の可能性がある。諸寄村には為世永神社(いせなが)という由緒ある神社もあるようで、調べてみる価値がありそうだ。その他に絵画史料も多数展示されており、紅花・ニシンなど近世商品作物の組織的な生産の在り方がわかり、とりわけ後者ではアイヌの労働風景が興味深い。さらに淡路出身の高田屋嘉兵衛とのかかわりで知られる「ゴローニン幽閉記」がロシアで1812年に出版され、その2年後には英訳出版されていたことは初めて知り、当時の情報流通の速度に驚かされた。土曜日にしては入りはあまり良くないように見えたが、行って損はない価値はある。