wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

佐藤雄基『御成敗式目』

本日は枚方3コマ。出かける前に確認した運行情報は問題なし、ところがJR改札前で事故で運転停止状態の表示、仕方なく預けた自転車に戻り阪急駅まで爆走、乗り継ぎを猛ダッシュして何とか京阪特急に間に合うが、おかげで汗だく、始まる前からドン疲れ。結局動き出したようなのでそれが正解だったかも微妙で、出費も余計。そんななかで夏前に購入していた表題書をようやく読了。式目そのものの位置づけの刷新とあわせて、中世社会論、鎌倉幕府論、式目解釈からの歴史認識論などにも言及した良書。「社会を根底から破壊するような異常気象や飢饉に苦しむ民衆を直接救済しようとする能力も意欲も為政者たちは失っていた」(13頁)と明言するのも、来年に向けて幅をきかせるだろう「成熟」などという言説をぶった切っているのもよい。なお以前に触れた鎌倉幕府論について付言しておくと、性格が大きく変動していく組織体をあるところで切り取って成立とするのは反対で、著者の1186年ごろに京都との「線引き」という自己規定を行ったというのも、「滅亡へのはじまり」(188頁)を余りにも早く設定しないといけなくなる(そう明記しているのは誠実なのだが)ので賛同しない。

御成敗式目 -佐藤雄基 著|新書|中央公論新社