wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

山形辰史『入門 開発経済学』

本日は1限なかもず・4限岡本のはしご。早起きに備えて寝酒をややセーブしたのだが、朝窓を開ける時間をケチったのが失敗で、肌寒さで熟睡できずヘロヘロで何とか終える。ただ秋の講義を意識して購入していた読みさしの表題書は読了。学史と第二次大戦後の国際経済の展開。絶対的な貧困は削減したものの女性・性的少数者・子ども・障害者・難民など不利な立場の人々の21世紀の貧困。一部アフリカ諸国の経済成長、携帯電話の普及とケニアで開発された送金サービスにより出稼ぎによる貧困率の減少、バングラデシュ文革期中国での医療イノベーション、技術革新による蛙跳び、感染症と医薬品企業の知的財産権の関係、新型コロナで中国が途上国へのワクチン普及に果たした役割など、21世紀の変化が描かれる一方で、2015年に日本で開発協力大綱で開発援助から国益及び日本の中小企業支援が可能な開発協力に転換され、国際開発離れを助長して内向き志向となったSDGsとあいまっての、自国中心主義に強い批判を記して締めくくられる。著者は日本貿易振興機構に関わり、外務省ODA三者評価を委嘱されるような実務系の経歴で、世界システム論・従属理論には批判的で、アフリカなどでのイノベーションを積極的に評価すべきという立場。それがあえてこのような締めくくりを選んだことを明記しているのは、かなり深刻な事態が進行している現れなのだろう。

入門 開発経済学 -山形辰史 著|新書|中央公論新社