wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

J.ドナルド・ヒューズ『環境史入門』

本日は組合執行委員会で外出し、読みさしの表題書を読了。昨秋に衝動買いしてしまっていたもので、2006年初版の2016年刊行の増補版を、香川大学教授でもともとドイツ経済史専攻で、鬼頭宏氏とともに東アジア環境史協会学会長という村山聡氏が、教え子で英語で環境史の修士論文し翻訳家として活動している中村博子氏とともに翻訳したものhttps://www.iwanami.co.jp/book/b376429.html。環境史の定義、20世紀初頭までの先駆者達、著者の母国で環境史の中心であるアメリカの諸研究、アメリカ以外の研究、グローバル環境史、多様な論点、入門のための手引きからなる。全191頁のうち、参考文献が143~176頁まで並んでいるようにブック・レビューを主体とした叙述で、概要は理解できるものの総花的で個別の論点についてはやや物足りない印象を受ける。邦訳書がマクニール、ダイアモンド、ラートカウなどほんの僅かしかないこと、日本人の著書は皆無なことが、得られた有益な情報。そもそも日本語で執筆された環境史全体を論じた著作が存在しないのが現状。近年講座ものはようやく出てきたが、史料が豊富で個別研究主体の日本史ではアメリカ的蛮勇による単著は見込めないだろうが、それでよいのかというところ。