wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師・研究員などとして生活の糧を得ていますが、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

安達宏昭『大東亜共栄圏』

本日は20日以来の電車外出なし。久しぶりのルンバ以外掃除、たまった雑用をこなし、散髪にも出かける。混んでる予感があったので、読みさしの表題書を持ち込み、案の定8人待ち(理容師は3人で昼休憩のため1人中座)の間に読了。もともと総力戦のための自給経済圏構想が存在したものの、ヨーロッパ戦線でのドイツ優位に対応して場当たり的に浮上。米英開戦後に具体化されるも、軍事作戦を優先させる統帥部に押し切られ輸送力が低下し米潜水艦攻撃がそれに拍車。現地の協力を得るためには日本側が想定していた不平等な階層秩序に置くことはできず、民族運動の主体性をある程度認めざるを得なくなり自給圏の運営とは齟齬を来し、日本の経済力では旧宗主国の機能も果たすこともできなかったという。大東亜共栄圏の崩壊と日本の敗戦は、英米に経済依存しながら資本主義国家として成長する一方で、アジアで勢力圏を拡大し自立しようとしてきた日本が抱えた矛盾が、限界に達し破綻したと理解されるべきと結論づけられる。陸軍・海軍・外務・財務などそれぞれがバラバラなのは類書にもあるとおりなのだが、経済的観点からの視点は興味深く、日本の通貨乱発がもたらした占領地でのハイパーインフレを示した表は講義にも有益。現地で日本人技術者がかなり殺害されていることも確認できた。かれらは軍属として靖国含めどのような扱いになっているのだろうか。

大東亜共栄圏 -安達宏昭 著|新書|中央公論新社