『現代思想10月号大学崩壊』
いくつかの学祭休講が重なったこともあり、引きこもりのまま久しぶりの更新になった電車読書の備忘http://www.seidosha.co.jp/index.php?9784791712861。知識資本主義のもとでの先端科学の技術革新と企業への移転要求、新自由主義による国家による教育費負担を削減しようとする圧力、文部科学省による統制志向がつらなった結果として行われた、本年6月に成立した「学校教育法及び国立大学法人法改正」についての多方面からの批判的考察、年功賃金制をとっていた日本経済の変容と高騰する学費問題、広島大学でおこった従軍慰安婦を扱った映画をつかった講義に対する学生の反発から巻き起こった異様な攻撃、福島大学での原発事故による放射能汚染に対する教員の行動規制など現在の大学が外部から加えられているさまざまな圧力、こうした圧力が強化される以前から大学そのものが抱えてきたハラスメント問題・非常勤講師問題など、もともと大学は理想郷ではないのだが、今行われている改革が学問の死につながるだけで、社会に対して全くプラスにならないことが全体としてよく分かる構成になっており、関係者には必読。ただしグローバル・ヒストリーを「グローバリゼーションと新自由主義の商品に他ならない」と断じるのは、わからないでもないがやや一面的か。なお非常勤講師問題について、先日の組合の学習会で取り上げられた早稲田の現状がまとまって伝えられており有益だと思うが少しだけ補足。外部社会への訴えとしてどうしても専任に比べ異常な賃金の低さと合わせて掛け持ちによる労働過多が取り上げられることになるが、これだと掛け持ちが割と自由に出来るような印象を与えてしまうのではないか。実際にはコマを増やすのは競合状態では大変困難で、当方にも何と四番手として先週一つ話があったが、それすら曜日指定が最初からなされていたため断る羽目になった(もともと休日明けで、しかも学校教育について何も考えていない政策により変則スケジュールが組まれることもある月曜日は専任がやりたがらず非常勤が集中している)。組合アンケートなどの数字についても、協力的なのは多数のコマ持ちのためむしろ実際より多めに出ているという感覚を持っている。