wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

服藤早苗『古代・中世の芸能と買売春』

本日講義は大学設置のPCがフリーズ。大教室で黒板を小さいため、図版スライドとWordファイルですすめていた手順が大幅に狂ってしまった。途中で動き出したかと思ったら最後でまたフリーズ。PC依存はこれがあるから恐ろしい。さて本論、著者は最新論文で拙著について、鎌倉時代の「中媒」と「中人奉行」および戦国期の「仲人方」を同一内容と見なしたことを批判するとともに、これを当方が一言も触れていない保立道久氏が用いた「公営売春」と一括りにするという、酷いレッテル貼りをしている。実証については前著を参照せよということだったので、刊行時未見の表題書を図書館で借りて電車読書で通読してみたhttp://www.akashi.co.jp/book/b103905.html。ところが驚いたことにそこでは拙著のその部分については、「中人奉行」に関する史料まで引用して肯定的に評価されているではないか。最新論文では何の言及もなく呆れかえるしかないところ。なお念のために述べると、検非違使が課税をするというのは、当該期の官司の動きの一つであり、当然「公営」を意味するものではない。また著者が依拠する「仲人方」に関する菅原正子説は、その実証が全て正しくても、獄を含む利権ユニットがいつ成立したかが説明されておらず、鎌倉期のものとつながる蓋然性は高いと考えられる。ここで書くことかどうかは微妙で、せっかく忠告もいただいているのだが、余りにももやもやした経過なので敢えて記した次第。なお印税に貢献していないため表題書の詳しい論評は避けるが、実証史学としてそれなりの水準には達しているもの。ただ史料に見えるのが上澄みに過ぎないことにどれだけ自覚的なのかはきわめて疑問。確かに古代に売春業は成立していなかった思うが、「買売春がなかった」とは到底思えない。