wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

秋田茂・桃木至朗『グローバルヒストリーと帝国』

今担当している「外来文化と日本の歴史」、後期の「人類の歴史」で活用できるかと思い購入し本日読了http://www.osaka-up.or.jp/books/ISBN978-4-87259-426-3.html。ロシアの中央アジア支配に果たした東洋学者の「正統派」を定義し「異端」を排除する役割を論じた長縄宣博論文、北大西洋における毛皮・捕鯨活動の盛衰と開国へのプロセスとの有機的関連を示した後藤敦史論文、日清戦争研究の現段階の論点を整理した飯塚一幸論文、日本郵船ボンベイ航路開設によるインド・東南アジア・中国・日本間に綿業を基軸とする交易関係の展開を示した秋田茂論文など、いろいろ勉強になるものはあった。その一方で元の成立を「中国統一」と理解したのは漢人のみで周辺世界はそう考えていなかったという、海域アジア史などといわなくても当たり前のことを延々と叙述して中国共産党を批判するだけの学問的には無意味なプロパガンダ文書(あげくの果てに北畠親房まで持ち出し「万世一系」を自慢したいようだ・・・石原慎太郎は喜ぶだろうが)、講義でも使わせてもらっている川北稔氏の西インド砂糖プランターのイギリス政治への影響力を否定するだけ否定して代案を全く示していない迷惑なものもあった。論集に当たり外れがあるのは通例とはいえ、新興宗教の教祖を「自称」する編者の一人にだまされて壺を買わされた気分は否めない。