wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

菊池秀明『越境の中国史』

本日は奈良で春日大社所蔵史料の写真帳閲覧(成果はチラホラ)、夜は四月の研究会の打ち合わせ(すでに告知は出ており何れ紹介します)。ということで、タイトルにつられ衝動買いしていた表題書の備忘を簡単に。18世紀の人口爆発を背景に漢人の移民が殺到した華南・台湾地域を、先住民族、古態の漢語を話す閩南人・潮州人・広東人・客家人(時期と編制のされ方で相違)との軋轢と差別、儒教科挙体制への適応といったさまざまな矛盾に満ち満ちた、中華世界の膨張のあり方について論じたもの。太平天国孫文と留学生ネットワークなど中国近現代史を理解する上でも重要とのこと。それにしても漢人の圧倒的なバイタリティーには驚かされる。だから専制国家が生まれたのか、専制国家だからそうなるのか。なお華南の歴史が日本史でなじみがないという言い方はどうなのか、日宋貿易から日本・琉球と直接往来があるのは華南系というのは常識かと思っていたのだが・・・。

『越境の中国史 南からみた衝突と融合の三〇〇年』(菊池 秀明):講談社選書メチエ|講談社BOOK倶楽部