wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

喜安明・成田龍一・岩崎稔『立ちすくむ歴史』

行楽シーズンということもあり淡路乗替で京都へ行く電車では座れることはなく、帰路も桂からではほぼ無理。そういうわけで電車読書が進んでしまい、先日書店で衝動買いしてしまったのが本書だがhttp://www.serica.co.jp/book4.htm・・・勉強になったこともあったが結論から言えば大失敗。中身は三者の鼎談なのだが、最初に史料実証に対する口を極めた批判が岩崎・成田両氏を中心に繰り広げられており、それと異なる箇所では喜安氏が自著を振り返りながら史料操作を誇り他の二人が褒めちぎっているという整合性のなさ。また批判するのは物故者のみで、意味深に伏魔殿などいう言葉を使いながら歴史学を批判するというスタイル。網野善彦の極端な美化など、余りにも恣意的。たまたま図書館で読んだ別の雑誌ではオールド左翼は共同体美化(自治ならまだわかるが)などと書いてあるものもあったが、どうしてここまで戦後歴史学を劇画化してしまうのだろうか。そういう著作が出版界で評価されているからもうどうしようもないところ。