wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

北島万次『秀吉の朝鮮侵略と民衆』

土曜日の研究会前(詳細は略すが、報告者と久しぶりにお話できたのはよかった)に購入して、月曜日の講義に利用できるかと思い、あわてて読み始め本日読了したのだが、完全に失敗。前半は事件の詳細が時系列で記されているが、羅列的で最後に15頁にわたる年表で再び繰り返されている。しかも当事者の発言や戦闘の詳細が記されているのだが、新書ということで典拠が示されておらずどれだけ史料的に信用できるのかがはっきりしない。また図版についても非常にわかりにくく、講義資料としての利用もできなかった。後半分は李舜臣の日誌をもとにしているが、官僚制国家朝鮮の矛盾ばかりが目立ち、船大工等の職人の編成など興味深い事項はあるが、平時との関係がよくわからない。また戦死した彼の日記が、どのようにして伝来されたのかも気になるところ。最後に論じられる朝鮮に降伏した「降倭」についても民衆の悲惨さが強調されるのみで、朝鮮側の鮑作人とあわせて、この間進展した海域世界の研究が全く組み込まれていない。著者はこの分野の第一人者と認識していたが、それにしては失望感が強く残るものになったhttp://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn1210/sin_k673.html