wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

吉見俊哉『夢の原子力』

本日は自主的研修日なのだが、雑用のため出かけることになり、またもや御堂筋線の人身事故に引っかかる。相変わらずついていないが、電車読書だけはすすむhttp://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480066763/。昨年の原発事故を受けて、アメリカの世界戦略としての「アトムズ・フォー・ピース」が、戦後日本社会において「恐怖」を周縁化して「夢」として受容された過程を、メディア分析によって検討したもの。被爆を経験した「からこそ」、原子力の平和利用を推進しなければならないという知識人による「救済」の言説。資源に乏しく、人口が多い割に国土も狭小な島国における経済成長に不可欠という産業界に見られる「成長」の言説。「便利」で「豊か」な未来生活をもたらしてくれる「幸福」のイメージという原子力平和利用博覧会・テレビ版「鉄腕アトム」などが提供した言説が並列。70年代になり被爆イメージが希薄になるにつれ「クリーン」で自然と「調和」したエネルギーという「調和」の言説が登場するという。英米における電力発展の歴史を簡潔にまとめたところ、戦後アメリカにおける「アトミック」の超プラスイメージ(水着のビキニの語源が水爆実験の行われたビキニ環礁に由来することは全く知らなかった)、アメリカの全面協力の下で開催された原子力平和利用博覧会と日本各地の反応(読売・正力が突出しただけではなかった)、ゴジラをめぐる日米関係などいろいろ勉強になった。ただ原子力的破壊イメージがサブカルチャーの世界で内面化するとして展開されている部分は、「AKIRA」も「20世紀少年」もちゃんと見ておらずついていけなかったし、それだけで核に関する意識を語ることができるのかは疑問に感じるところ。昨日の記事はどういうわけか、映画HPにリンクが張れなかったが、今日は問題ないようだ。