wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

池上俊一『パスタでたどるイタリア史』

昨日から講義も始まり、日常生活に戻る。春休みの不調が続いたままで、リズムもいまいちで途中退席する受講者もちらほら。受講者が少ないと採点は楽になるのだが、あまりにもまばらだとそれはそれでやりにくくなる。一回目の歴史学とは何かといった抽象論が通じにくくなっているのもその要因か。今年度は9コマ、慌ただしい日々が続くとともに、電車読書も本格的に再開。1月に購入して積んであったもので、諸大先生の旅行記をうらやみながら読了http://www.iwanami.co.jp/hensyu/jr/toku/1111/500699.html。ローマ時代の小麦文明を前史とし、中世における衰退と農民層の食するごった煮スープ=ミネストラを母胎に、12世紀ルネサンス期にイスラムの影響を受けたシチリアで乾燥パスタが、北イタリアで生パスタが成立。大航海時代に南米からトマトなどの新食材がもたらされソースとなることで、ナポリの食文化が野菜食いから「マッケローニ食い」に転換。各地の都市でパスタ・ギルドが女性職人により成立し、花嫁道具に加えられるほど女性(母性)と強く結びつけられ、カトリックブルジョワジージェンダー意識の基礎に。現在でもおなじパスタが地域によって別の呼称をもつほど多様な一方で、料理書の編纂がイタリア国家統合に重要な役割を果たす。ファシズム体制がパン・パスタ・オリーブ油を基本とする食生活を定着させる一方で、アメリカ移民は不適切な食生活として非難され、近代化論者も否定的だった。とイタリア史にとってパスタ史が欠かせないものであることが示され、それに匹敵するのはインドのカレーぐらいだと誇られる(和食史もなかなかのものになると思うが・・・)。ジュニア新書ということで読みやすく、いろいろ勉強になったが、現地で食せないのはやはり残念。