wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

盛本昌広『草と木が語る日本の中世』

今日でようやく一週目の講義が終了(昨年と同じく木曜日が自宅での準備日)。地下鉄が遅れ回数券を買う暇がなかった(車掌は謝りもしない)・予想以上に受講者がいてあわてて印刷に走ることが二度など小トラブルはあったが何とか終える。それでも月・火の3コマずつは体にこたえ、今日の往復は半分以上爆睡していたがともかく読了したのが本書。1月に書店で見かけ昨年春にとある論集に提出した論文との関係が気になりその部分だけは自宅で読んでいたが(少し持っていかれた部分があったが全体の独自性は保たれていた。結論はあっちこっちでしゃべっているのだが、デッサンのため差し戻して投稿論文にするわけにもいかず、いつの日か刊行されることを願うばかり)、今回改めて通読したものhttp://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/02/0/0226320.html。事例の収集はさすがで教えられることも多く、植物名と関連事項の索引が設けられていて辞書としても利用することができる。これだけ立て続けに本が出せるのはうらやましい限り。ただあとがきにも散漫とあるように、平安から戦国までの事例が雑多にちりばめられいて、時代的変遷が充分に捉えられていない点は気になるところ。事例紹介も有益とはいえ、史料編纂所のDBで検索可能な『平安遺文』・『鎌倉遺文』、室町・戦国期のいくつかの古記録、著者が得意とする関東の戦国期が中心で、全体像をみるうえではやや偏りがある。また参考文献には史料編纂所DBをはじめとして上げておくべき書物に抜け落ちがある一方で、いきなり個別事例の論文が引かれる点はやや問題か。そうした不十分さはあるとはいえこのテーマは大きな可能性を持っており、本書がそのたたき台になることは間違いないだろう。なお77頁「丹波美濃田并河内」は三ヶ国が列挙されているわけではなく、美濃田・河内ともに丹波国内の地名。