wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

佐藤幸男『国際政治モノ語り』

今日も京都は観光客がいっぱいで、行きは何とか高槻市で座れたが、帰りは十三。明日の報告のため立ったまま史料読みをする羽目になったが、少しはアイデアが湧いてきたのは怪我の功名。ただし授業前に別世界に行くと切り替えられなくなるので、月曜日から読み始めていた本書を読了。夏に見かけた時にはパスしたのだが、後期の講義「人類の歴史」で最後に現代史をすることもあって購入してみたものhttp://www.hou-bun.com/cgi-bin/search/detail.cgi?c=ISBN978-4-589-03342-0。石油・自動車・木材・マグロ・水・米・コーヒー・アパレル・象牙・ダイヤモンドなどそれぞれのモノに即した流通構造の展開はいろいろと知ることもあって興味深かったのだが、総論に当たる部分が抽象的すぎて何が言いたいのかよく分からない。フェアトレイド・開発援助など実践的関心が全面に立っているようなのだが、世界経済の構造を実証的に捉え切れていないため、上滑りの議論にしか思えず悪文を多数見られた。またイギリスにおける奴隷制廃止に関する通説が、経済合理性に反した廃止運動の高まりを重視するものになっているというのには驚かされた。プランテーションの経営分析から導き出されたとするが、どうみてもイギリス経済の全体構造という森を見ずに木だけで評価しているとしか思えない。またディアスポラという概念が東インド会社まで適用されているようだが、そこまで拡散してしまって意味はあるのだろうか。こういう内輪の議論をされるとどうしようもなくなり、授業準備という目的からすると余りよい買い物といえるものではなかった。それより明日のレジュメ作り。