wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

遠藤乾『欧州複合危機』

本日はルーティン姫路。相変わらず生活リズムがつくれず行き帰りともほぼ爆睡状態だったが、読みかけの表題書を読了。何となく気になって衝動買いしたものhttp://www.chuko.co.jp/shinsho/2016/10/102405.html。最初に近年立て続けに起こったユーロ危機・難民危機・安全保障危機(ウクライナ情勢とテロ事件)・イギリスのEU離脱の概要が紹介され、とかく理想視されがちなヨーロッパ統合の流れが危機とともにあったこと、その一方で危機に対しての問題解決の枠組みになると期待されていたEUそのものが、<集権が必要なのに民主的正当性が追いつかない>ことで逆に問題そのものになるというジレンマを抱えるようになったこと、それにも関わらず欧州エリートにとって権力としてのEUには大きな存在意義があること、同心円的に多層化するという今後の見通しと、グローバル化による中間層の没落が、国家主権・民主主義とのあいだでジレンマを起こしているとし、リベラルな価値観の存続にほのかな希望が託されている。イギリスの自由民主主義に関する高い評価に代表的な、「現実主義的」な国際政治学者の発想に違和感を感じないわけではないが、戦後ヨーロッパ史の流れとグローバル化以降の展開が世界にもたらしたものが、わかりやすく示されていた。ただ最後に経済への規制の議論は若干取り上げられるのだが、そもそも所与の前提になっている(通貨危機に陥らないために強いユーロをつくる)無秩序な経済そのものを何とかしないかぎり、日本はもはや絶望的なのは別にしても世界全体の見通しもやはり暗い…。そんな中でも負債を抱えたまま早12月、とにかく今週末までに原稿を仕上げなければならないのだが…。