wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

渡辺京二『なせいま人類史か』

試験ウィークに雑用が重なり、バタバタしており、本日は簡単に。一ヶ月ほど前に書店に行くと著者の本が大量に並んでおり、そのうちの一冊を購入して昨日までに読了した。原著は86年刊行で、タイトルになっているのはその直前に行った講演ということ。題材としておにゃんこクラブが取り上げられているような戦後日本の爛熟期で、ポストモダニズムがはやった時代に資本主義の運動空間の廃絶を、組織・運動的形態ではなく、文化的相対主義と最後まで戦うことでもたらすと主張するのだが、いまいち趣旨が理解できなかった。後半は80年初めのもので、講座派的歴史学を徹底批判して、明治維新国民国家成立として描いたもの。研究史を十分に理解していないが、90年代に全盛となる近代国民国家論に先行するものだが、日本史研究者の持つ近代および日本の暴力性についての見方は少し違うように感じる。この段階で講座派批判を前面に出すのは歴史学会とは一線を画した在野の評論家という立場からの独特のものでそれはそれでよいのだが、あまりにも透徹すぎる感がして強い好感を持つことは出来なかったhttp://www.yosensha.co.jp/book/b90580.html