wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

貴堂嘉之『南北戦争の時代』

本日は再来年度刊行予定の市史史料編の会議で三木へ。当方の担当部分がもっとも遅れており、本年度後半の大きな仕事。なおお隣の歴史資料館では企画展「細川・口吉川の遺跡」が開催されており、中世の遺物も展示されているので(備前だけでなく丹波大甕が出土するのはこの地ならでは)、関心のある方はどうぞみき歴史資料館 - 三木市ホームページ。現住地からは電車で片道二時間以上かかるため、電車読書も進みそちらの備忘も少し。これまた後期の講義に向けて衝動買いしていたもの。19世紀の合衆国史について南北戦争の背景と顛末を軸にしながら、「奴隷国家」から「移民国家」への転換という著者のシェーマに沿って概観したもの。全くの不勉強だったが、男子普通選挙権の早期の実現がヨーロッパと異なり、社会主義運動が発展せず不人気で、労働運動も強権的に弾圧され、その過程を通じて帝国主義的な国家が成立したこと、戦争直後は黒人投票率が90%以上で、それが共和党急進派を支えていたが、「再建の時代」が「未完の革命」に終わり、1890年代には年間1000人以上の黒人がリンチで殺害されていたこと、戦争の戦死者は絶対数でも国民比でも第二次大戦より高く、国家建設・国民創造の起点になり、その記憶はトランプ政権支持者の南軍旗のシンボル化まで引き継がれ、戦争モニュメントの是非が争点になっていること、などいろいろと勉強になり図表も豊富。ただ図像は新書では小さすぎてスキャンしてもわかりにくいのは難点南北戦争の時代 19世紀 (岩波新書)