wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

藤井穣治『天皇と天下人』

本日は午前中に授業を済まし、一年半前に提出した自治体史原稿の初稿打ち合わせがあり(疑問点を指摘されたがすっかり忘れている)、久しぶりに北山で史料閲覧に浸る。そんなこんなで往復の電車で読み終えたのが本書。この間に関係すると思われる論考が著者によって発表されていたこともあり少しは期待していたのだが・・・、信長・秀吉・家康それぞれと天皇との関わりの場面・場面を余りにも実証的に追求したものにとどまる。個別実証は恐らく確かで、戦争にあたっても戦勝祈祷から行われるものと結果が出てから勝利した側に祝福の使者を送るもの、和睦を受け入れるものと拒否するものなど、さまざまな指標は提示されているのだが、結局は天下人にとって天皇とはどういった存在だったのかについては、全く示されていない。またトップ交渉の場に限定されすぎていて全体としての位置付けもなかなか見えてこない。近年でも公武結合王権といった提起もされており、せめて一章を割いて研究史の中での著者なりの見解を示してほしかったところ。まあ古書店で購入したので贅沢は言えないが・・・http://www.bookclub.kodansha.co.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=280735。月曜日に隣の部屋の初老夫婦が転居していった。こちらが引っ越してくる前からの住人だったので少しショック。これでこのマンションで3番目に古い住人になってしまった。