wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

岡田哲『明治洋食事始め』

月曜夜の通史は今年度でお役御免となり、来年度から「外来文化と日本の歴史」を担当することになった。そういう事情もあって書店で文庫版を見かけて購入してみたもの(初版は2000年刊、文庫は7月10日1刷で手元は9月4日4刷なので結構売れているようだ)http://www.bookclub.kodansha.co.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2921235。幕末の肉食事情から始まり、文明開化期の西洋料理をめぐる諸事情を経て、あんパン・とんかつなど日本独自の洋食が生まれる過程が、試行錯誤を含めてたどられている。肉を薄切りで販売するのは日本だけ、ポテト・コロッケは大阪で誕生したなどいろいろエピソードとしては興味深いものが多数あり有益。ただし著者に求めることではないが、輸入や農耕用の牛をつぶしていた段階から牧畜がどのように導入されたのか、また屠殺・精肉の導入過程と前代のシステムとの関係(関西では近年まで全く切り離されてはいなかった)、西洋野菜生産など、原材料供給がどのようになされていたかが気になるところ。母親によると舞鶴の海軍のためにタマネギ・トマト・ジャガイモなどを親戚が栽培して結構儲けていたようで、単なる食文化の問題だけではなくさまざまな影響を与えているはず。こういうことを近代史研究がちゃんとやってほしいのだが・・・。