wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

国立歴史民俗博物館編『「韓国併合」100年を問う』

土曜日にようやく医者で喉の薬を処方してもらい、土日はほとんど寝て過ごしたので少しましになるかと思ったが、本日午後の河原町丸太町での史料めくりは睡魔との戦いとなった。しかも目録がないため二時間以上は近世の寺内文書ばかりをめくる羽目になった。戦国末に受給した禁制と同文のものを近世いっぱい受給しているのは興味深かったが(発給者は源・藤原などの氏と官途だったためすぐには特定できず、所司代?)、解説に多数あるとあった中世文書は最初の数点のみで、二点をコピーしただけで16:00前にダウンして帰宅。先ほど体温計を挟むとやはり微熱がある。昨晩深夜に太地の鯨漁に関するドキュメンタリーを見てしまったのはよくなかった(狂信的な批判者にアングロ・サクソンの本質も見てしまってレイシストになりそう)。そういうわけで本日の帰路はほとんど寝ていたが、先週から読み始めていた418頁の同書を読み終えるhttp://www.iwanami.co.jp/moreinfo/025802+/top.html#03。何しろ執筆者だけで39名にもおよぶ多岐にわたる内容をここで紹介するほど暇ではないが、教条主義的韓国人研究者一名と抽象的議論に終始した日本人研究者一名の文章をのぞき全体的には面白かった。とりわけ永原陽子氏の文章は義和団事件鎮圧の暴力の担い手達が、世界的な植民地支配への抵抗運動への弾圧者でもあったという姿が描かれており、世界システムとしての植民地支配の共時・共犯関係が興味深く示されていた。また小学校教育で日本人は教育勅語朝鮮人は皇国臣民の誓詞と、区別されいたという水野直樹氏の文章も、創氏改名政策と合わせて矛盾に満ちた皇民化政策をあぶり出したものとして重要だと感じた。その他にも重たい問題が多数指摘されていたが、日本人移民に関する専論が載せられていなかったのは残念だった。個人的な動機でもあるが、日本植民地の特質は多様な階層が現地で生活したことにあり、それがもたらした意味は追求されるべきだろう。何れは自身でも取り組みたいところだが・・・。