wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

河内祥輔・新田一郎『天皇と中世の武家』

本日は久しぶりに京都北山で写真帳めくり。Meが活躍してくれて少しは進み、重たい目をして持っていた甲斐はあった(昨日午後から起動しなくなったPCを先ほどスイッチを入れると起動した。金曜日に購入するつもりだったのだがまた迷ってしまう)。ただしせっかくの施設が来週から三週連続で休館なのは痛いところ。水曜日に休みが集中しているのは昨年からわかっていてあえて入れたのだが、卵の特売も度々売り切れになっており木曜日の方がよかったかもしれない。電車読書のほうはすでに別の本に突入しているのだが、昨日10頁ほど読み残していた同書を先ほど読了。前半部分は最初から期待していなかったのだが予想以上にひどい。最初から「朝廷の歴史を見ると、その前半の八〇〇年ほどは単独で政治的支配を行い、その後半の七〇〇年近くは幕府とともに支配を行った」という文章に唖然とする。古典的通説により鎌倉幕府が守護地頭が設置された1185年に成立したとすると(著者自身がそれを強調している)、朝廷の成立は385年頃!!いったい何があったのだろうか?叙述のキー・ワードとされる「朝廷再建運動」も意味不明。「朝廷」の定義が示されないし(明治維新後の裸の天皇は朝廷でないとされるが)、「再建」はつぶれたものを立て直すことと考えるのが普通の意味で、著者が述べるのは嫡流の再構築に過ぎない。個別の叙述もにも牽強付会の解釈をひたすら繰り返した部分とひたすら不明とする部分があり、説得性に著しく欠ける。後半部分は少しは期待していたのだが、こちらも天皇にまつわるシステムがいかに必要かという難解な説明ばかりが繰り返され、興味がひかれるものとはいえなかった。せめて先行研究を痛烈に批判でもしてくれればよいのだがそれも中途半端。新本で購入して読む前に古本屋で見かけて少し後悔したが、読了した後はさらにそれが強くなったhttp://www.bookclub.kodansha.co.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2807343