wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

𠮷田賢司『足利義持』

本日は定期試験、講義140・史料講読13。特にトラブルなく終わったが、締切原稿のため採点は当分先送り。ただようやく読了した電車読書の備忘だけ残しておく。索引に赤松の名前が出てきたこともあって、衝動買いしたものhttp://www.minervashobo.co.jp/book/b285652.html。当方もちゃんと押さえているわけではないが、この20年で飛躍的に進んだ室町幕府研究の成果を踏まえた手堅い叙述。とりわけ制度史的側面については安心して読むことができ、個々の政治変動の背景についてもこんなものだろうとは思う。その点で室町幕府の確立期としての義持の評価としてはある種の到達点を示すものなのだろう。ただひとたびその外に出てみるといろいろと違和感を感じるところも。著者が依拠する某氏の「都市依存財政」というのは、提唱されたときから文句を言っているが、狭義の幕府財政が土倉・酒屋役によって支えられているという以上の内実はない。むしろ「都市」は全くブラックボックス化されてしまっており、当該期の経済社会の評価は共通理解が得られていないのではないか(もっともこれは自分自身の締切原稿の課題…)。また当該期の守護家というのをどう評価するかで、幕府政治の見方もかなり変わる気がする。もっとも著者のような研究手法を切り開いたのが、経済史家による概説だというのも皮肉なもの。当のご本人は現在どのような認識なのだろうか、とりあえず新著で確認する必要があるようだ。まあともあれ明日が最後の講義、あとはとにかく原稿…。