wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

湯本貴和編『里と林の環境史』に寄せて

本日は知り合いの報告を聞きに行く予定にしていたが、昨晩からもう一つ体調が優れず明日も研究会で月曜日の準備も残っていたので家ごもりにした。Fさん申し訳ありません。春休みの怠惰な生活から一転して授業が続き少し疲れが出たようだ。GWは予定がないためそれまで乗り切らなければならない。授業準備のほうは三時過ぎには終わり、その後は読みかけていた同書にとりかかる。本書は総合地球科学研究所の日本列島における人間ー自然関係の歴史的・文化的検討プロジェクトhttp://www.chikyu.ac.jp/retto/の総括として刊行されたシリーズ日本列島の三万五千年の一冊で、主に近畿地方里山と人との関わりについて取り上げられている。文献史学の論文は水野章二「古代・中世における山野利用の展開」のみで、あとは花粉分析・絵図からの景観分析、フィールド調査の報告などからなるが、歴史学的・民俗学的アプローチがとられているためなじみやすい。本書の執筆メンバーの研究会には一度呼ばれて報告して、フィールド調査に連れて行ってもらったこともあり、昨年秋に開催された「2010年代のための里山シンポジウム」とも重なっており、内容自体は目新しいものではない。しかし論文となったものを改めて読むと、研究者それぞれの問題関心と分野の到達がよく理解できるものになっており、やはり有意義なもの。この問題に対しての文献史学からの貢献という点では史料の豊富な近世史・近代史に及ぶべくもないが、里山的利用形態と山林資源の商品利用が本格化する中世史研究から提起できる問題も少なくないと考えられる。昨年度から行っている写真帳めくりでも断片的な史料はかなり収集しているのだが、何とか方向性をつけたいところ。