wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

吉村武彦・館野和己・林部均『平城京誕生』

本日は午前中に京都で試験(また日陰に雪が残っていた)。夜は月曜授業の最終日だったので(試験のプリントも配布していたため出席者は非常に少なかった)、図書館にこもり東寺百合の目録から造営方の文書をひたすらめくり、室町期までは何とか集めることができた。史料をめくっていると久しぶりに同じく月曜昼に非常勤をされているSさんにお会いして、愚痴を聞いてもらったのも収穫のうち。電車読書のほうは授業で毎年取り上げながら最新の研究からは遠ざかっているテーマについて昨秋に購入したもので、昨日から読み始めて読了。全体構成はⅣ部で政治史と都市史が交互に記されているのだが、政治史のほうは余りにもつまらない。とりわけ大和王権から平城遷都まで叙述したⅠ部ははっきりって紙の無駄で、別の著者が難波論でも書いた方が遙かにましだ。その一方でⅡ部「飛鳥と藤原の都」はF氏の研究に触れられていなかったのはどうかとも思ったが、いろいろと新知見が得られて有益だった。とりわけ藤原京の多段階成立論とその矛盾からくる平城遷都論はいろいろと勉強になった。各段階の飛鳥・藤原地域の図面が示されているのも有益だが、どういうわけか1頁使うのではなく2行分本文がとっており、その分だけ小さくなって非常に見にくくなっているのが難点。平城京のほうも聖武の彷徨や行基との関係などに紙数を割く必要はないように思えたが、木簡をもとにした具体的な叙述部分には下級官人が地縁関係からリクルートされてくる構造など得られる点もあり、来年度の授業では図面も含めて修正するのに利用できそうだhttp://www.kadokawagakugei.com/detail.php?p_cd=201001000444