wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

篠田英朗『国際紛争を読み解く五つの視座』

本日は月曜3限の振替13回目。電車のダイヤが乱れていて乗換駅で3本接続待ちにイラついたが何とか事なきを得る。そういうなかで昨年度まで1995年で終わっている火曜授業の改定にならないかと思い購入したものhttp://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062586177。現代の国際秩序が主権国家と普遍化した自由主義の覇権にあるとした上で、国際政治秩序への挑戦として紛争を捉え、理論を紹介しながら各地の事例について論じられている。①勢力均衡論として、中国の超大国化に伴う東アジアの変化を、②地政学として、ロシアの動向とNATOの拡大を、普遍主義への留保の事例として、③文明の衝突として、アメリカの「対テロ戦争」を、普遍主義への挑戦として、④世界史システム論として、アフリカ問題を述べ、⑤アメリカの「明白な運命」としての膨張主義自由主義の関係、成長の限界に、普遍主義の欠陥とし、それらによって普遍的国際秩序の完成が阻まれているとした上で、日本は安定的な国際社会の枠組みを維持しながら、成長の限界を受け止める方法を示す使命を持っているとする。あとがきでの昨年の安全保障法制をめぐる議論についての叙述はある意味で「冷笑的」で、それぞれの議論も理念よりも国際関係を重視した冷徹で、安易な解決法も示されていない。例えば東アジアでは米中の勢力均衡を前提に、日本・韓国の立ち位置が論じられており、「歴史認識」などはどうでもよい書き方になっている(ただし昨年末の、日韓による「従軍慰安婦問題」での「合意」はまさに著者の想定するものになった)。その一方で単なる大国関係だけではなく、格差やアメリカの政策の問題点も長期的視野から論じられており、十分勉強にはなった。また80年から現代までの日米中のGDPの推移など有益な図表もあり、早速使わせてもらうことにする。