wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

大津市歴史博物館「大津 国宝の旅」

忙しいとさんざん書いておきながら、今日は昼に授業を終えると地下鉄と京阪を乗り継いで大津まで出かける。別所駅で降りて、新羅善神堂(南北朝期に足利氏が建立)を見てから大津市歴史博物館で表題の展示を見学。現大津市域の国宝を総ざらえで展示するという豪華なもので、聖衆来迎寺蔵「六道絵」がまさに圧巻という他ない。客は少しはいたがやはり少し離れていることもあるのか、先月の京都国立博物館とは比べものにならない少なさ。展示ケース越しとはいえ熟覧できるほどで、保存状態の良さに驚くとともに、六道絵に貼り付けられている地獄を説明する漢文の書体が楷書のものと、草書に近いものの二種類あることに気づく。その他にも園城寺西教寺・真正寺・石山寺などの多数の逸品が並び目の保養になった。なお解説文は丁寧で、「紙背文書とは」・「仏像の見方」など注目点を記した説明文も別につけられており、工夫されたものになっている。室町期の大津を描いた近江名所図屏風が展示替えで見られなかったことが唯一残念だったところhttp://www.rekihaku.otsu.shiga.jp/news/1002.html。その後は園城寺境内を巡り、長安寺・関蝉丸神社まで足を伸ばしてから、近世大津町を少しだけ見て大津駅から帰阪。町おこしのために商店街では大津百町の写真展も企画されていたが、商店街は完全にシャッター通りという状況で活気は感じられず、中世のほうが栄えていたかもしれない。蝉丸神社も寂れた雰囲気で、京都との大きな落差が感じられた。中世の大津は以前から史料を集めているので、どこかで成果発表しなければならないところ。写真は長安寺下にあり牛塔と呼ばれるもので、関寺の牛を供養したという由緒を持ち重要文化財にも指定されているが、これもひっそりと立っていた。
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