wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

『勘仲記』二

2006年の続群書類従完成会の突然の倒産には大変驚くとともに、日本史学会にも大きな痛手となった。幸いにも出版事業そのものは八木書店に引き継がれることになったが、価格は暴騰することになった。古記録を刊行している史料纂集シリーズも5000円前後だったものが10000円を超える価格となり、出たら取りあえず買っておくというのには躊躇するようになった。とりわけ研究関心が、鎌倉から室町まで展望したものへ、フィールドも京都から大阪湾・さらに山や河へとどんどん広がっているため、鎌倉期の古記録への比重も薄まっている。幸い非常勤先で史料集が図書館に完備して借り入れ可能なところがあり、月曜日に借りてきて木・金の夜に必要部分のみをDBに打ち込む作業を行った。DBだと細かい表記は無視をせざるを得ず、本当は手元にあった方がよいのだが、当座の条件では仕方ないところ。『勘仲記』はすでに史料大成本で打ち込んでおり、本巻の一部は原本を底本とした史料紹介もされているが、大成本の読み間違えの訂正がかなりあるのと、関心の変化で気になる史料が加わるので、結構な量になった。また夏にコンピューターを買い換えたため、ATOKに最初から組み込まれているため登録していない単語がなかなか出てこず(例えばnobuと入力すると信が最初に出るよう繰り返し覚え込ませていたのが全くのご破算に)苦労させられた。それにしても大住・薪相論における春日社・石清水社のしつこさにはあきれ果てるとともに、よく幕府がそれにつきあったと感心させられる。前に兵庫関の東大寺興福寺相論もそうだったが、事実上の共存関係にあるのになぜあそこまでエネルギーを使って対立しなければならないのか。幕府倒壊の最大の原因にはなったと考えられるが、室町幕府はそこまでつきあってくれないので結果的に寺社側にとっては自殺行為にしかならなかったのだが。また枚岡社で異国降伏祈禱が行われているのはなぜなのだろうか。叡尊も手を出しているようで、なにかこの時期にあったようで考えてみる必要があるところ。ほかにもいろいろ興味深い記事があり、久しぶりに自分の勉強をした気分http://www.books-yagi.co.jp/pub/index.htm。本日は何とか来週前半の授業準備の残りをこなすことができ、明日の研究会には参加できそうだ。