wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

『日本の対外関係4倭寇と「日本国王」』

長らく勤めている非常勤先(途中で嘱託講師としての出講という時期もあったが・・・)で、はじめて「海と交通」というテーマで講義をしたのが2001年度後期、それから3年ごとに行い今年で4回目になる。この間に授業回数が13回・14回・15回と延びていったことに対応し、若干の微調整は加えたが大枠は変更していない。すなわち90年代後半からの村井章介氏の一連の著作がベースとなっており、それに数回分の近現代史を加えて一応の通史としている。この間に私のほぼ同世代から若手の中世史対外関係史研究者が輩出して研究が進展していることは認識していたが十分について行けておらず、昨年執筆の神戸市史でも思いもかけず兵庫がらみで叙述をしなければならなくなったが、それも旧説に依存したもの。そういう事情でいくつかの抜刷をいただいていたが、思い切って今年の日本史研究会大会で本書購入し、電車の中で少しずつ読了http://www.yoshikawa-k.co.jp/news/nc638.html。個別論文をあげるのは避けるが、やはり10年もたつと研究状況は一新されることが痛感される。南方・北方史研究は大きく進展しているようだし、元・明・朝鮮の状況に踏み込んだことで精緻化している。「蒙古襲来絵詞」の竹崎季長が前駈として突進する著名な場面も、対峙するモンゴル兵が後世の追筆で、相手を追い立てているのが本来の図像だと言うことも初めて知った。早速に本日の講義には取り入れたが、前期に2大学で嘘を教えていたことになり、恥ずかしい限り。やはり概説の講義にはかなりのアンテナをはる必要があることが実感されるが、「人類の歴史」などはもうお手上げという他ない。その上に今日の絵巻の説明を聞いている学生はほとんどいないとなると(板書をするとノートだけはとるが、それ以外はうつむいている)、むなしい思いが残る。さらに今年度から学生が一日三科目の試験になるのを避けると言うことで、金3の試験を水4に実施するという無謀な日程が提示される。非常勤にとって大迷惑なのは当然だが、そもそも半期15コマというのは誰のためにしているのか根本的な疑問。無責任な形式主義ばかりがはびこり、役に立たない人材を疲れ切った教員が送り出すという全く無駄なシステム。将来は絶望的という他ない。